仏教説話

看病

  お釈迦様が祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)におられた時のことです。

 お釈迦様は毎朝、托鉢(たくはつ)に出かけ、その後、自分の部屋の中や森の木の下で、静かに座って瞑想されました。

 時々、お弟子さんや、お参りに来た人々の為にお説法をされました。

 また、散歩をしたり、お弟子さん方の様子を見てまわられることもありました。

 

 ある日のことです。

 お釈迦様は、祇園精舎の中に とても汚い部屋があることに気がつかれました。

変な臭いさえしてきます。

 不思議に思って部屋の中をご覧になると、お弟子さんが一人、「うんうん」うなりながら

寝ています。大変苦しそうです。

 お釈迦様は中にお入りになって

「いったい、どうしたのだ?」

と、おたずねになりました。

 お弟子さんは答えました。

「はい、お腹が痛いのです。」

「誰も看病してくれないのか」

「はい。でもそれには訳があります。私はわがままで、仲良しの人が一人もいません。

他のお弟子様方が困っていても、助けてあげたことがありません。だから私が病気に

なっても、誰も見舞いに来てくれないのです。」

 お釈迦様は、いつもお側にお仕えしているお弟子アーナンダに手伝わせて、

そのお弟子さんの衣を洗い、部屋の掃除をし、体をさすっておやりになりました。

 お弟子さんはどんなに嬉しかったことでしょう

 

やがてお弟子さんは元気になり、それからは他のお弟子さん方と仲良くして、

立派なお弟子さんになられました。

                                    終