『おろかさ』
ある日のことです。青年は庭木に水やりをしていました。
そんな時、ドンドン ドンドンとお祭りの音が聞こえてきました。
近くを通りかかった小さな男の子がお母さんに話しかけています。
「早くお祭りが見たいな」
母親は
「もうすぐですよ。今日は王様もおいでになるのよ」と話しています。
青年はつぶやきました。
「僕も行きたいな・・年に1度のお祭りだもの。そうだ!あの猿達に頼んでみよう」
「お猿さん頼むよ・・これは君達にも出来る仕事なんだ」
ボス猿は「どんな事かね」と聞きました。
「僕の代わりにお庭の木に水やりをやってくれないか」
「なあんだ・・そんな事か 朝飯前だ」
「お礼はするよ・・お土産を持ってくるから」
「よし、引き受けた! 行っておいで」
ボス猿は仲間を呼びました。
「皆、集まれ 庭の木に水をやるんだ」
皆は「なあんだ水やりか つまらない」と言いました。
ボス猿は「それでも水やりをすればおみやげが貰えるんだぞ」
皆は「うゎーい 早く水をやろう、早く片付けてお土産を待とうよ。
あれっ いくら水をやってもすぐに吸い込んでしまう・・・もっと注ぐのかな・・」
ボス猿に聞いてみました。
ボス猿は「これではきりがないな。そうだ!木を抜いてその穴の分だけ水をやればよい」
皆で木を倒そうとしました。
「それ!倒せ もう一息だ」「よいしょ!よいしょ!」
ボス猿は「駄目だ 根っこを掘って引き抜くんだ」と声をかけました。
皆は一生懸命に土を掘ります。
「お土産を貰うのも楽ではない」
「爪が痛くなったぞ」と口々に言っています。
ボス猿が「よし!わしも手伝う・・さあ木を押せ!」
ドーン。
「やっと倒れたぞ!この穴は大きいからうんと水をそそげよ」
「さあもう一杯で終わりだ」
ちょうどその頃、青年は祭りから帰ってきました。
「あー面白かった 素晴らしい祭りだった。猿達はどこだ」
「わぁー!!大変だ庭の木を根こそぎ引き抜いている!」
ボス猿が来て言いました。
「でもね この方がたっぷり水がやれるからね。」
青年は「なっ・・なんだと! 頼んだ僕が悪かった」
ボス猿は「早く約束のお土産をおくれよ」と言いました。
青年は怒って「そんなものやれるか!!早くこの木を元通りに埋め込むのだ!!」
ボス猿は「それでは話が違うよ そんならあんなこと聞くんじゃなかった。
くたびれ損というもの さっさと帰ろうよ」と言って帰ってしまいました。
終