仏教説話

10月・苦しみのもと

お釈迦様は、苦しみのもとは怒りの心であることをお説きになりました。
そして次のようなお話を聞かせて下さいました。

ある村に、ご主人様と召し使いの女性が暮らしておりました。
ご主人様は召し使いの女性に
「今日は、私の好物のいり豆を沢山作っておくれ。」と、頼みました。
召し使いの女性は
「はい、承知いたしました。」と答え、沢山のいり豆を作りました。

その後、洗濯や他の仕事をしている間に、一匹の羊があらわれました。
羊は「何やらいいにおいがする。」と、いり豆の鍋に顔をつっ込み、
半分以上食べてしまいました。

そこに召し使いの女性が洗濯を終え戻ってきました。
「なんでこんなところに羊が・・・。」
不思議に思い台所に戻って見ると、作っていたいり豆が半分以上なくなっていました。
「あの羊があやしい。」と近づいてみると口元に、いり豆がついているではありませんか。

そこへご主人様が
「早くいり豆をもってきておくれ。」と
召し使いの女性を呼ぶ声がしました。

「何をぐずぐずしていたのだ。」と運ばれてきたいり豆の鍋を開けると
「あれほど頼んだのに、これしかないのはどういうことだ」と
ご主人様は召し使いの女性を怒鳴りました。

召し使いの女性は、羊を許せない気持ちでいっぱいになりました。

ある日、召し使いの女性は羊を見つけ「いいものをあげるよ」とおびき寄せ、羊の頭を
棒でたたきました。
羊はそのことをとてもうらみ、ある夜、召し使いの女性がでかけるところを待ち伏せして
おそいかかろうとしました。
すると召し使いの女性が手に持っていたろうそくの火が羊の体に燃え移りました。
逃げまどう羊の体についた火は、民家の家に燃え移り、やがて村中にと
火の手がまわり燃えひろがりました。

ちょっとの怒りが自分を害し、人を害し、多くの物を滅ぼすことになってしまったのです。

お釈迦様は、怒りの心からは苦しみしか生まれない、ということを
教えてくださったのでした。

                                 -終-